2007-04-01から1ヶ月間の記事一覧

崖線

流れ下る水に沿って 牛車の軋みが幽かにある 二輪で下りゆく仙川左岸 桜欅楢椚が覆う緑陰の頭上 萱薄葦が茂る丸子川の脚下 はけの水を集めた谷沢川が 野川と共に多摩川に合流する 岡本静嘉堂文庫美術館からは さらに多摩丘陵が展望される 是真作〈柳流水漆絵…

和田堀給水所

桜の開花時期から一ヵ月後 世田谷区大原の和田堀を再訪 濃紅・薄紫・白の躑躅が咲き 杏も小さな薄緑の実を付け 胡麻斑しじみ蝶が吹き寄せられ 蒲公英や酢漿や苜宿の間を縫う 東京都水道局のシンボルマークを 額に貼り付けた神殿のような門扉と そこに到る直…

春はあけぼの 初日の出を見てから 四半分身を北に捻る 天を照らす陽光の 岩戸なす雲間から 繧繝模様に染まり お日さまの出御だ 巣から飛び立つ鳥達 穴から行列する蟻達 水芹を縫う川の流れ 蛙や魚の卵を揺籃し 河口から海に流入し 終日のたりのたりと 岸辺の…

伝言-伝説

伝えるべき言葉を しかるべき相手に 顔貌を見据えつつ 形姿に寄添いつつ ひとことひとこと 繰り出してゆくと 柔らいでくる間合 ふたことみことを 姿形相貌に迷わず 声調の韻律だけで 真意の核心を探り 相対する応じ手に 全身全霊を以って 説きあかす物語だ

扉-前後

分かった瞬間 出来ているのだった 瞬きをするまに 変わっているのだった こちら側の状況が 舞台を回してあちら側へ 活き活きと新たな世界を見せ 私自身が変容した世界にいる分からなくなった瞬間 目も耳も見ず聴かず 五官は閉塞感に包まれる 第六感だけが状…

心の土器に

春雨や餡パンの餡も噛みかねて 春雨や珈琲園の雨季いかに 春雨や海面上がる珊瑚礁 春雨や猟銃重く熊を撃つ 春雨や裸踊りに紙一重

日々是新

一年生のうたぴっかぴかの 一年生 なまえをよばれ はい せんせい なまえをよべば ほい まーちゃん あおぞら たいよう あそんで わらって あめのひ かささし かいもの てつだい ぴっかぴかの 一年生 えんぴつ けしごむ きょうかしょ ノート わすれずもって が…

礼楽 其の一

'91年の[people time]を最後に Stan Getz の sax を聴く事はできなくなった。 Kenny Barron の Pianoとのduoだった。 〈east of the sun (and west of the moon)〉 が始まるや、sax は癌に侵された身体を 逆に捻り絞るように鋭さを鳴り響かせる。 piano はそ…

ごんごん頭突きする がんがん手掘りする ぴきっと鋭いとさか立て 朝の孟宗親族一同にご挨拶だ 張りめぐらされた根を踏まえ 吾が輩一肌脱ぎますぞ ごんごん見聞広めつつ がんがん闘い深めます 笹鳴き鶯渡り来て 永啼き唄う頃おいに 風はさやかに吹きましょう …

天上天下唯我独尊

今から2500年ほど前 釈尊が摩耶夫人から 生まれて7歩あるき 右手は天を指し 左手を地に向け 称えた言葉は 今や自惚れの 輩の標語 しかし虚空の 色褪せぬ真言は 翩翻と蒼天に翻り 天と地の理を説き 聞く者達へ慈悲と 流れ去る水の法を 汲み上げては示し 眼耳…

桃-花

邪鬼の指先の如き枝先に 爪を燃やした様に咲出す 不可思議な霊力を秘めた 此の世と彼の世との境の 黄泉比良坂の麓に咲く花 実は邪気を払い水密の味 蛆のわく伊耶那美命を見 現世に戻った伊耶那岐命 素っ裸で禊ぎ祓いをして 衣冠帯等から十二神を得 左の目か…

涌く水

断崖を九十九段下る途中 楓の新芽が五枚ずつ重なりはじめ 檪の嫩芽も艶消しの垂葉をつけて 崖線から滲出する天水の恩沢を受け 海老蟹は澄んだ水底の朽葉に潜み それを掬う児どもたちが網を持って 黒目を輝かしながら覗き込む小流れは 樹木や虫や魚や鳥たちを…

芽が出る 新しく 幸運がめぐってくる 成功の兆しだ ☆ 目が覚めて 今日 人面牛身の件がいる坂を 花影踏みふみ煉瓦造りの館へ 焼き鎮められた器に対面する 窯変翠青磁盌(ヨウヘンスイセイジワン) め みみ はな からだ て のわざ 百億年前の宇宙誕生の瞬間が 星…

雲 其の一

かたちの無い水が天にあっては さまざまな雲となってみえる 春霞は地にあってかたちがわからないが 雲はさまざまの生き物の姿をおもわせる いろいろな夢を変幻自在にみせてくれる 金斗雲の金斗はひしゃくだが ふわりと乗って高速飛行をしたら 痛快極まりない…

落花流水

春のいそぎ 花曇の鈍さ 久方の光長閑けき天空の 春雨じゃ濡れて行こうか 雷あり突風ありの荒れが 積み重なっては崩れて 百花繚乱咲き乱れ 百面相の人心が身を あらためて魅せる 来歴と将来とを占って 八卦よいよい 地を踏みしめて脚を踏ん張り 天上の神々ま…

春耕 菜の花に囲まれた畑を 農夫が鍬で鋤き起こして行く 遅い日脚がゆるりゆるり移り 一服 黒々とした畝に挟まれた 波打つ谷の影の上を 煙草の煙がゆるくゆるく流れ 一時 微小な細菌類を瀰漫させて 空中窒素を喰らう根粒細菌が 穀類の生育と結実を請け負う …

闇-光

地獄の釜の蓋が開く その底にさす光は 払暁の東の雲を染める朱よりは 夕照の西の空に広がる茜に似る 一日千秋の思いで苦難に耐え 一年万感の想いで逆境を越え 四方八方が不明のなか 四季春秋を体感しつつ 雪が融けて山川草木鳥獣虫魚 それぞれの季節を共生し…