2008-01-01から1ヶ月間の記事一覧

八街

右 霊異之澤池 鬱蒼と茂る森影 百年の欅の精霊 千年の巌に降霊 万年の土と交霊 今 その途上に 左 弁天之涌水 滾々と溢れる泉 数十年来信徒が 数百年来鴨達が 数万年の亀甲羅 今 枯れなんと 後 水神之河川 溌剌さの果てに 何年醒めてるか 何年でも睡るか 幾年…

境内

天神さんの 梅の蕾綻んだ 紅梅は青空に 白梅は曇天の 大風呂敷に 行儀よく並び 寝そべる牛に 見上げられ 賢み賢みもの申す 東西南北の鬼神よ 地の底に深く眠れ 地祇どもが 土を持ち上げ 霜柱は黒土に 薄氷は赤土の 皮衣外套に ひたと張り付き 遊ぶ寒雀たちに…

事件

白黒斑の犬が 飼い主らしき 女人に戯れて 白手拭の端を 噛みながら 飛び跳ねる 川沿いの 公園 何十軒もあった 一戸建ての 瀟洒な住宅 公園用地に 買収が進み 最後の家で 一家が 皆殺しになった 生きていれば 何歳と言おう 虚数の年齢を 刻むが如き 廃屋とし…

首肯

いやいやながら 頷くことの中身 させる人の卑しさ させられることの おぞましさに卑屈 双方の不幸の回線 せざるをえない 仕方ないのかな 最善策が費えて 次善策も未定で 弥縫策しか今は 一応の解決には 喜んでそのように あなたもわたしも もてる力をすべて …

首を上げて

十字路 四方から 人が集まり 四方へと 人は出てゆく 物が技術が 集散する 文明の交差点 T字路 東西の緊張関係 弾き出されるや 流謫の地 一本道の先は 行き止まりだ 地は開墾され 文化の花が開く Y字路 分岐点で 左右に分かれる 左右から合流する 一つのもの…

一言主

饒舌のなかの沈黙 沈黙のなかの饒舌 家の外でなかへ 入りたいと喚く 家の中でそとへ 出たいと呻く 間には一枚の扉 混沌のなかの秩序 秩序のなかの混沌 私は歌うのだが 空は聞こえているか 空が呟くのだが 私には聞こえない 間には木魂が響く 真剣な一言なら …

不可抗力

盲点以外良く見える 目の奥の網膜の底の 一部が剥がれて出血 緊急手術と相成った 見えていた視野総て 見えない薄闇に変り 手探りの机と引出し 足元の段差と階段が 異次元の歪みを生む 嫌な事も聞こえた耳 聞き取れぬ奥の鼓膜 一部が不正確に振動 精密補聴器…

全能 その一

聡明な指導者である 熱烈な支持者である 勤勉であるがゆえに 廉直であるがゆえに 衣食住は足り発展し 芸術文化が開花して 文明は爛熟期に入り 往く先で廃墟となる 英知の総てを集結し 情熱の多寡を結束し 精密であるがゆえに 粗野であるがゆえに 全知全能の…

堰堤

流れずにある 湖池沼ダム貯水池 動かずに減り 天上へ告げ知らせる 蓮根の泥沼や 山葵田の清流は 手入れに手入れを重ね 産物は流通経路に乗る 流れる川を堰き止め 溢れる氾濫原と放水路を 鮎が遡り鷺が狙う 地上に告げ知らせる 稲作時散布の殺虫剤や 温室栽培…

飛礫落葉

砂礫と菅茅の追分では 抱えてきたはずの追憶 片鱗を手にするか未知 いずれも風に飛ばされ 乾いた茎と促された石 双方がいやいやながら 中空に踊らされ舞って 何処へか分去れてゆく 火山灰に根を張る唐松 地上の栄養が貧弱な分 針葉の葉緑素生産物を 梢から根…

矛盾撞着

如何なる防御も利かない攻撃 如何なる攻撃も守り通す防御 直接対決しない限り共存でき 対決するやいなや勝負がつく スポーツ競技に於いては常に その時その場での一発勝負だ 準備練習は勿論のこと研究も 寒暖に応じた身体の調整から 各部位と全身の筋肉を鍛…

果実 1

冬曇天の路上に 硬い皮に包まれ 剛質無患子降る 陶磁器に盛れば 微動だにしない わずかに扁平で 褐色の柔らかい 髪の毛のように 胚芽を囲み覆う 艶消し漆黒の球 夏曇天の黒土に 軟らかく乳滴る 葉陰の無花果だ 硝子器に盛れば 尻から裂けつつ 果肉を仄見せて…

七歩豆煮歌

荒ぶる五体如何 捻れる魂魄何処 松籟にも紛れず 唸り声這う地に 啜り泣く風韻毎 故地追わるる時 流浪の悲歌嘆ず 身装へる破衣を 志違へる居所に 世を捨てぬまま 真意の如く掲げ 狂に近き漂泊を 道中の連れ共々 仮の喜劇と演ず 観に似て非なる 生死の境目には…

傘芸

雨傘が廻る ここ関東に 久しぶりの 終日雨降り 女傘は低く 男傘が高く すれ違って 互いの来し方に しづくを滴らせ 往きつ戻りつし 唐傘が閉じ 闇に音響く 久しぶりに 赤提灯の中 女は酒肴を 男が盃傾け 小糠雨降る 戸外の往来に 耳を欹てつつ 心を転がして …

鏡開き

何でそこにいなくてはいけないのだろうか 俺は絶対にここでは何もやりたくはない そことこことのずれや違いや微差あれども どこでも一切のことが面倒くさいだけだ あの人はこういうのだけれどもヤレヤレだ 別の時にはあれこれ助言してくれるが でも私はどう…

詩惹句

「人間の声が 残るだけだ」 人がいる間は ほんとうの獣も ほんとうの鳥も 姿を見せない 獣じみた 鳥の如き 声だけが 人と人との間に 吐かれ転がり 咽び呻いて! 「ギリシャ人の 桃源のハケを見に」 万物を流転させて ヘラクレイトスは じわじわと滲みる 遊水…

ひたひたと

ひたと 据える 正面に 水分け 泳者が 来るや 衝突し 水面に 謝辞を 泡吹く ひたすら 奔走して 背に借財 人掻分け 謝罪の身 ひたる 温泉に 全身が ほぐれ おろす 重荷は 心身を 愉悦の 謝意に 導く

四季前兆

寒さの 前 あらかじめ 失われた 感覚を 予兆 し 暑さの 前 すでにある 有り余る 受容を 排除 し 寒くもなく ほどよく 引締め 身の 糧 暑くもなく い寝がて 弛緩し 破綻 良

口外

人口に膾炙し おいしい情報 鯉の口パク 地元のネタ 政治と経済 交通と天気 サンドウィッチ ハンバーグ 中身の甘露煮は? 世界に通じる? 握手政治屋 商工会議長 流し素麺を掬う 中央から地方へ 一方通行型の利権 よくみなさん 我慢している!? わきゃない …

相似

人類60億のなか DNAのなかの伝達 二重螺旋構造だが 完全コピーではない 数%転写したら後は 俺のもので自在だ 親子一家は幻想だ 悲しくも美しい! 世界に三人いる 自分そっくりの その一人一人は 心臓も肺も脳も 自分一人のもの 別個の生を刻む どこが似るの…

天網

百億か二百億か 人の年数では その頃宇宙から 投網が放たれた 広がる形に応じ 銀河系神話系と 人の言葉では 名付けられた星 星雲・暗黒星雲 そして地球は 逡巡か刹那か 人外境では 森羅万象の 手綱が握られ 操り方に合う 恒星間惑星間の 通信伝達法に 位置づ…