2007-11-01から1ヶ月間の記事一覧

三叉路

心とは 善悪の彼岸 否此岸 こえて もどって 今ここで 満々と水を湛え 揺れんとして 喜怒哀楽即応ず 命とは 生死の向こう 否手前 未生以前の 宿命あれど 不死身ではなく 脈々と波を打ち 疎にして 天網恢恢漏らさず 夢とは 意識の果て 否無意識 覚醒時の言動 …

睡眠

阿吽 生れ落ちて阿 死に果てて吽 廻澤神社入口 高麗戌たちは 育つべき仔を 守り呼吸する 血縁 身躍らせる雄 体弾ませる雌 毘沙門天出口 白虎たち吼え 襲来する敵に 拍動する心臓 脳髄 覚醒した来歴 休眠中の記憶 五不動巡拝し 赤青白黒黄と 夢幻を踏襲し 海…

青山

色彩を失い 空を喪った 最果ての地 氷結の天空 から故地に 再び相見え 再び聴聞し 身に触れた 蘇生の思念 断念を接ぎ 絶望が蘇り 四季廻る地 水光の田野 へと足跡を 緑の山間に 灰の岩間に 心に響かせ 在世の安寧 妻を娶りて 才幹長けて 海での魚漁 山では狩…

時雨忌:元禄7年10月21日を哀悼して

時は 飛び去らない なぜなら 飛び去れば そのあとに 隙間ができて しまうからだ 今ここにある 時すなわち 松であり 竹である 小春日和の南御堂 障子には蝿がおり 弟子達が 鳥餅で採ろうと 戯れていた間に 芭蕉は 息を引き取った しこうしていま 飛び去らない…

四象

白 素朴な木綿 純粋な絹布 輝く貝真珠 青空に湧く 雲の一団塊 陽光は傾き 秋 黒 松煙の古墨 象牙の顔料 泥染めの糸 垂れ込めた 暗雲に時雨 陽光は隠れ 冬 青 若草の萌芽 木々の新芽 土に蕗の薹 多摩丘陵に 薄緑の諧調 陽光は煌き 春 朱 炎帝の跋扈 灼熱の猛…

四瞬

溶闇の染料 夜の幕開け 須臾の一閃 破邪顕正を 祓うべき技 緋色の東天 日輪の往来 刻々の情報 状況分析を 図るべき能 茜色に夕焼 日没に炭壺 薄明に闡光 逢魔が時の 豪腕一投足 漆黒に塗布 深夜に鼓動 冥闇に指令 払暁の備え 調息と隠遁

四方は天地についで

東 払暁 青龍が 太陽玉を 追いながら 明眸を開闢し 山海川の神々を 目覚めさせるのだ 西 夕焼 白虎は 沈む王と 招く月読に 底無の闇冥と 魑魅魍魎を示す 睡眠のうながしだ 南 燦然 朱雀が 草木虫魚 人獣を呼び 豊饒の海から 命ある者の繁栄 天地の加護を願う…

三色

赤黒 顔色が 紅潮し 闘いに 身も心も 昂揚し 血が 全身の 随所に 渦巻き 影さえ 赤黒 紅白 玉入れ 白の籠には 紅い玉が 紅の籠には 白い玉が どんどん増え 網目は膨らみ パンパンと 終了の合図 数え挙げる 紅白 白黒 戦塵煙る 騎馬戦だ 背負った死に 目もく…

すみれ

すぐにわかる はずの気配 じきにきこえる はずの唸声 やがてにおう はずの獣臭 まぢかにつたう はずの足音 いきなりみえる はずの全身 みごとにうらを かかれて背後 巨体は見えず 足音も無く 体臭も無く 喉声も無く 気配を殺し 知覚の盲点 六感の間隙を 縫っ…

あいす

あたりまえ 朝日を浴び 朝飯を食い 朝錬をする 稼業も 遊行も ここからだ いいひより 一番最初が 一番大切だ ここ一番の 勝負も 挑戦も いつもここ すばらしい 過ごし方 過ぎた時 すぐ今を 補って 試みる つねに次

ころす

こまるのは 根を張る地面 枝を広げる空 限定された欅 囲繞された櫻 地の神と人も 宙に遊ぶ鬼が 見え隠れして 悪戯の仕掛け ろくでもない 毒針を腹蔵し 鱗粉を撒いて 営巣する蜂や 交雑の茶毒蛾 歩行の哺乳類 飛翔の鳥類が 移動する空に 禁立入の標識 すみに…

いかす

いなす つっぱり野郎の こわばり女狐の 議論論法 あるべき姿 とるべき道 ほんとにそうなの? なんでそうなるの? どんだけー! かわす 先例に基づき 恒例のご接待 茶話懇親 ほろびる姿 きえゆく道 いつからそうなの? なにかがちがうの? これまでー! すご…

手技

上手から 礫を打つ 直に標的へ 飛ぶ素材だ 垂直の意志 正中線の 兜割りだ 中手から 放つ鉄心 過たず的中 必殺の武器 水平の呼応 平行線の 点綴だ 下手から 石滑らす 放物の変幻 唸る共鳴器 曲線の飛行 不可視の 脚截りだ

泳ぎ

口は 空中から 水面へと 潜るまで 吸気 水中から 空中へ 露呈する 瞬間 呼気 肺呼吸 胎生の 対応だ 手は 中空から 水中へと 抵抗を 減らす 入水 水中での 亀の手を 抜き挙げ 速やかに 水に戻す 両生の 応対だ 足は 水中で 左右手と 連動して 規則的に 舵を取…

不慮

全く 浮かばない 雲の句は 雨のせいに して 日暦が 替わるまで 黙々と 語に 集めさせて 直に 沈まない 泥の句は 池のせいに して 来月に なったら 深沈と 言外を 削除させて 実に 許せない 雷の句は 天のせいに して 直撃後 亡失し 不明と 慮外を 刻印させて

俯仰

俯く青年 泥濘の道 玉川上水 に沿って 太宰治は 失われた 愛惜の花 品位なき 棄嫌の草 のお手玉 を落とす 仰向く男 永訣壇上 市ヶ谷に 檄飛ばし 三島の名 稀代の雄 梟首晒し 天賦の才 衰亡の果 身命賭し 皮衣残す 斜に構え 瀧飛沫と 踊り子と 末期の目 康成…

分位

東にゆく 極東から 葉が落ち 枝差す欅 天照らす 日を抱き 空に投げ 西にゆく 泰西へと 葡萄薫る 石塁積み 地の涯て 繊月沈め 血を濯ぎ 南へ行く 泥の江に 麝香煙り 水路巡る 舟行の末 星は光り 魂は窶れ 北へ行く 永久凍土 狩猟の旅 氷雪渡り 犬橇操り 天幕…

村上三島展

草隷楷の書体 太い筆細い筆 濃い墨淡い墨 漉紙や絹に 連綿と 奔る 字 詩文 どんな 風や光に 晒されても 消えぬことば

遭難者

暴風雨が小屋を敲く 標高2236mの鳥海山 頂上小屋でのある夏の夜のこと 無理はするなと止めたのだが 下のお浜小屋を出たとの連絡 登山者は到着予定を過ぎても ここの扉を敲く気配がないので 酒と毛布を持った捜索隊が出発 やがて数刻後一人の男を発見し 毛布…

眠らぬ者無きように

眠る音 余韻が消え 静寂が極まり やがて平静に 鍵盤音の連打 ショパンの 幻想曲に乗って 浅田真央が滑り出す 弦に打ちおろす ハンマーの ベートーベン ピアノソナタが響く 雛鳥が初めての 飛翔を過たず終え 満面笑みをもって 氷上に静止する 起ちあがる音 ジ…

破邪顕正

わかったことは 生まれた年月日 時間と場所も 父と母の名前 学歴と職歴 長所と短所 特技と趣味 天命と人生 是は怪しい わからないこと 吾人はどこから 来てどこへゆき 今はどこにいる という疑問から 何のために生き 誰・自分・世界 いずれのために いかに生…

鏡像

右面の表情 左から登場 観衆には 状況が 語られ 背景が 説かれ 周知される 左面の表情 左へと退場 舞台には 内面が 吐かれ 心情が 露われ 空間を廻る 正面の表情 右往左往し 松を鏡に 葛藤が 役者も 観衆も 巻込み 夢幻を演ずる

存命

百聞は 一見に 如かず という どうか 一聞は 多見に 勝ると 盲者が 笑うが 実態を 裏切り 風評が 真実を 覗かせ 拝聴し 世間話 酔眼に 二重に 映る街 聴聞す 情報の 精度を 自他の 位置を