2007-10-01から1ヶ月間の記事一覧

三者三様

鳥が 獣が 人が 飛び 疾走し 踏む 巣まで群れ 仔に運ぶ餌 来方と行方 幾許かの里程 幾時かの経過 無分別の時空 柿の実を食べ 獲物の臓物や 天地の恵みを 得るがまま 各々の道を 耽々と往く

虚実

思わない ではなく 思わぬ 出会い に似た 出現 虚の 膜を 破って ここに 生まれ 哺乳類に 変容する 憎らしい ではなく 憎めぬ 離別を 演じて 失踪 実の 域を 通じて 彼方に 隠棲し 風顚族に 合流する

白秋

囀りが聞こえてくる 間近のベランダ手摺 元気に舌を転がして 全く物怖じしない嘴 盛んに頭を振りつつ 羽毛の手入れをして お相手へのお披露目 欣喜雀躍する雀の子 遠吠が聞こえてくる 家並みの間を縫って 救急車やパトカーと 防災無線の時報とに 即座に反応…

一過

青空だ 全く雲がない 東京ドームを映して 後楽園大泉水の池面が 水の鏡となる午前の光 吾等は黙々と語り合った 黄葉だ 既に枝を離れ 小盧山周回の石畳に 椋の実を散開させて 伯夷叔斉の仁徳を拾う 彼等丁丁発止論戦する 水紋だ 浅き夢みし 地の底を刻んで 潜…

不明

花眼 眼中に 咲く花 その影に 見え隠れし 何かが動くが 今見えている物 見えたかの如き物 屈む 背丸め 骨も撓め 身の中心に 押し込んだ 弱気の虫ども 如何に退散させ 背筋を伸ばさんか 鏡 映る 沈む 底まで 抱える器 喜怒哀楽に 波立つ水湛え 理知に泡立つ面

黙祷

紙を 握りつぶす 消し去るべき 言葉が 丸く 投げ返そう 飛礫としての 反論を 息を 呑み込むと 反響する声が 意図を 手の 鋭い鉛筆芯 背中に刺さり 疑義が 総て 口の中では 飛礫に包んだ 言葉だ

すべき事

いや と言ったら嫌 にらむ そねむ つつく はたく 組み合うまで とめる者 とめられる者 やめる者 やめられる者 うまく噛合い 日常へ まあ と言ったら応 とくに べつに いまは たまに 仕事そこそこ ぜひ と言ったら諾 うける者 そうさせる者 ながす者 させまい…

盛衰

榮! 夕闇に浮かぶ篝火 曇天に開花する花 炎がぱちぱち爆ぜ 蜜はほとほと滴り それぞれの揺れる 振動が波となって 生身を透きとおる 再三再四の活力だ 枯! 総ての葉が落ちて 殆どの神経細胞も 桐のかしゃかしゃ 脳のこしょこしょ それぞれが結実し 裸の固体…

在野の優美

杜鵑草咲く まだらの花 ひかげの花 摘まれずに 群れて一年 鳴かず飛ばず 誇らずに 柔でなく 目立たず 確かに 開く 姿 不如帰鳴く 特許許可局 鎌倉円覚寺 杉木立から 南方虚空へ 喉声太く響く 羽ばたく 雨上がり 堂々と 飛ぶ 姿

蒼影

眠り姫たたんたたん 霧立ち昇る秋の夕暮 仙川右岸を下りつつ 祖師谷公園殺人事件 左岸に残る宮沢家を 黄や赤に変じ始めた 木々の間から透かす 赤や黄の血と漿液が 加害者の包丁により 屋内の床壁に塗られ 被害者の生身は消え 行為の記憶と記録は 犯行の当事…

遠吠え

犬たちの目線は飼い主に注がれ、衣食住すべてがご主人様の意中。番犬やペットの領域を超えていまや伴侶とも言える存在だ。人に媚び諂うばかりではなく、介護・救助・レスキュウその他で実働する犬がいれば、芸をして人を楽しませる犬も居て、まず犬を見掛け…

おおきなお世話 まったく面倒 えらそうな言い方 がんばればかり すごく一方的 きがきかないし だいきらいだよ そしてまた そう言いつつ 頭の中には 最初の文字が 点滅するが そうした二人 案外お似合 逆風の季節 逆説の二人 鴉に変身して 給水塔の縁や 屋上…

浮沈座標

浮く 浮かす手 放る足 風呂の湯船に 自身を委ねる 皮はよじれ 骨はゆるむ 暖かさと 減る重力 人として 繋ぎとめん 座る 達磨の腕組み 座禅じゃない足 畳表に居場所を 定めて身を置く 循環系を保ち 感受する経絡を 神経系に伝え 智の蓄積と 発信の技とを 黙示…

釣瓶落とし

点在する 街の景を綴り 東方へ漕ぎ出す 繁茂した藪枯らしが 緑道の涸れた流れを 蔓で絡め縁取る 線状に延びる幹線 肋骨の支線に交差し 阿弥陀籤状態で 繁茂した保存樹が 行く手を囲うので 欅の陰を迂回する 一面の原野 百年前の図に重ね 密集する棲家は 繁茂…

いづれの御時にか

初対面 シナプスが激しく接続 お馴染み 反応する回路の常習化 拒否感 いやがうえに点滅する 終局面 脳神経回路は冬の街路樹 枝から離れる葉の一枚一枚 〈枯葉〉は舞い狂いながら 一言も語りはしない 潤いの日々青春 覇気溢れる朱夏 慈しみ合う白秋 落葉帰根…

重心

地 に足 立ち方 は垂直だ 背筋から腰 首筋より肩へ 負荷を振り分け 軽い旅の気分だね 空 に手 捌き方 は水平だ 右手から左 左足より右へ 受け払い弾いて 強い鋼の印象だね 宙 に頭 保ち方 は無尽だ 跳躍し着地 旋回し静止し 常道を打ち破り 森羅万象の風韻さ

自他

会う会い方だ 見る見方また すべてに係り 人として踏む 現場が修羅場 言う言い方だ 聴く聴方また 一点に絞られ 友として抱く 理想のあり方 考える方法だ 眞っ更さらに 戻して見ると 偽物の分節と 本物の結節が すんなりとは わからないが あいまあいま みえ…

すでにいつかめ

犀 の肌 もつ樹 七歳児の 手掌に滑る 幹や木の股や 繁みから零れた えもいわれぬ芳香 子 らが 登る樹 見る間に 幹も繁みも 一回り大きい 枝先に顔を見せ しのびやかな薫香 金 と銀 開く花 嗅ぎわけ 小鈴が響き 零れる手裏剣 醸す桂花陳年酒 はなひきむけ微薫

晩餐

葉 一枚 バジル ちぎるや 芬芬と薫香 だから合せる 鶏 皮付 檸檬塩 いためる 滴々と油脂 一緒に炒める 湯 溶く トマト スープに 茄子も一緒 甘酸っぱい色 芋 薩摩 サラダ 輪切胡瓜 白い干葡萄 生の地の恵み 馬 鈴薯 細切り ソースは アンチョビ 一緒に炒める…

伝授

月 映す 水面に 波の皺を 風が立てる 田 毎の 水面に 幾つもの 月が映る 影 掬う 手指は 月も水も 漏れるだけ 梟 暗視 首肯後 鼠族捕え 智恵復旧す