蒼影

sokuze2007-10-16

眠り姫たたんたたん
霧立ち昇る秋の夕暮
仙川右岸を下りつつ
祖師谷公園殺人事件
左岸に残る宮沢家を
黄や赤に変じ始めた
木々の間から透かす
赤や黄の血と漿液が
加害者の包丁により
屋内の床壁に塗られ
被害者の生身は消え
行為の記憶と記録は
犯行の当事者と当局
追うものと逃亡者に
引き裂かれたままだ


振り男てれんてれん
時雨て来る冬の午後
慶州仏国寺への坂を
ひた登る鼠色の人影
此の世に在る己の生
彼の世を頼る仏の愛
煩悶は足跡を砂礫に
懊悩は首から虚空に
華麗な豪遊生活時代
極貧の幼少時が甦る
身についた凶器の技
身を装う狂気の振り
生みの母があろうに
育ての父がいように
斃れ死独身の果てだ