2008-02-01から1ヶ月間の記事一覧

のなかにて

ひさしぶりに 水中で見る光 ひさかたの雲 乗せて運ぶは 亀甲羅の仙人 湯浴みの女人 見るやいなや 神通力を失う ひしめきあう 野中の牛群だ 埃濛々とたち 追う一犬狼は 両角の猛者が 睨むやいなや 項垂れ尾巻く ひそやかに 市中に棲む ひとりの漢 精鋭の天空 …

はやしにて

竹林に午後の光 横様に過ぎって 影は落ち葉に縞 鳩たちに指示し 傍観する書斎で 言語は朽ちつつ 新たな菌糸類に 再び語られる様 壊死崩壊のまま 地中に根を張り 微熱を明滅させ 槇にも午後の光 針葉で分裂して 幹に巨影を巻き 烏どもを遅らせ 枯葉の寝床には…

命の開閉

枯れ木に花が咲くならば 元のジュウクに戻してね 枯れ木に水をやっても 吸わない零れて溢れる 脳内の神経細胞は 葉の落ちた枯れ木 高濃度栄養素を 注入して何ぼだ 外皮が枯れ 生きる盆栽 手入次第 素材次第 刺激 反応 生 物

場次第

一期の期は最期 一会の会は最初 最初で最期だと いつわかるのか わからないから そのつもりでね はじめてあった きがしないひと わかれてもまだ あいそうなひと 光と影との境は 状況で千変万化

多聞

右手から口 左手から工 神託来たれ 供犠奉らん 予言は函へ 品は冥暗へ 雷鳴が轟き 嗚咽響かせ 松籟を尋ね 鳥声を聞け

山 ! 川 ?

共通の標的 赤川君と 青山君は 茶沢君が 気になる 清流を海へ 山道を頂へ 所定の道を 踏まずに 山でも川でもない 沢を上り下りして 我らを避けている 流離の解釈 茶沢君は 赤川君に問う 水はどう流れ 人はどう動き 全ては何処へ 択一以外の法 沢を伝う秘技 …

発生

生誕までは胎児 その父の精子と その母の卵子が 合わさるや否や 順次億千万兆と 役割を分担する 細胞が分裂して 人への旅が始動 生誕から赤ん坊 祖先からの来歴 脊椎動物の進化 脳細胞の集積と 二重螺旋の記憶 体骨格の発育と 体内臓器の発達 人類への第一歩

厄落とし

八十八歳まで 八十島かけて 漕ぎ渡った海 瀬戸内海の浜 野球も相撲も 場所はあった そうじゃなもし なことじゃけん 蜜柑密度の秘密 九十九折の道を 折返し二十六歳 羽化登仙の風で 休まず登る翁だ 骨皮筋衛門の身 盤根錯節脳神経 雨降れば透過し 日照れば看…

後半

還暦まで 有為転変 無為錯誤 こころみ つきない 日々の暦 寸秒の時 未知の先 古来稀なり ほしいまま おのれまず 敷き延べて 矩を越えず 自他ともに 愛し惜しむ 古木の開花

中盤

四十男に蛆が湧く 身辺に限らず 物の片付け 事の整頓 怠慢は 然り 身体も 知識欲も 御し得る時 世の方寸を量り 四十にして惑わず 人生五十年 老若男女 相手の 機微 命 一つ 大事と 熟知する 夢幻の遊戯

前半

二十過の後半 肌の張りには 皺の陰でさえ 薔薇色に満ち 浅い眠りの後 四肢は疾駆し 藍色の疲労は 瞬く間にとれ いついかなる 情況も楽しみ 夢に残るのは 白い苦悩のみ 三十路の半ば 筋骨の蘇生に 風塵の漂いを 脳髄の渦中に 雌雄の虹を見 覚醒と就眠は 表裏…

風立ちぬ

名を呼ばれて 声の主を見る 屈託のない表情 溌剌とした動作 手元は働きつつ 口元に笑顔零れ 二十種類以上の パンを製造する 窯の前では師匠が 厳しい顔で点検し 着実に焼けてゆく 早春の戸外は寒風 顧客で一杯の店内 いざ 生きめやも 出会い頭の台車に 積み…

変化

素朴 ありのままで ありつづける のは あらゆる変化 すべての対応 の外 応変 いつもかわる そこでかわる でも もとはおなじ すべてひとつ の中 変容 かたちがかわる なかみもかわる それ こそ本来の形質 だからまた受容 可能

麗質

寒くても青空 檀の実の白玉 人の命の消息 犬の媚の鼻鳴 すべて映す鏡 寒くても緑葉 大根の白太足 胡瓜の棘曲鼻 レタスの吐息 気根を張る力 寒くても赤色 トマトの地声 苺の甘い囁き パプリカの唄 サラダは色だ 寒くても橙だ チョコレート マーマレード ヨー…

憂うること勿れ

天が墜落する 雨に腐乱する 風は擦傷する 朱が捺染する 穴に陥没する かも知れない 全てから護る 日が照る間に 月は満ち欠け 星座を占う刻 命は宿曜を得 運を授受する 生は手放しの 自然に任せる 他人の善悪は 天の神託より 測り難いもの 言行は両親が 我子…

不具

自ら肘折り 兵役を逃れ 俗塵に塗れ 初めて翁は 詩人に遭い 来歴を語る 両足を車に 轢断されて 義足と共に 訓練と共に 俊足記録の 陸上走選手 障害は個性 身体の何を どちらから 加減乗除し 日常生活を 構築するか

咒器

一言の中に 心を籠める 漆塗の器に ほっと一息 瞬時の曇り 温度湿度は さっと去り 一珠の芯へ 気を凝らす 白玉の杯を すっと一献 須臾の冴え 喜怒哀楽は そっと隠れ 一撃の隙 意の如く 氷の刃が 間髪不入 刹那両断 阿諛追従 左右合掌

春節---旧暦1月1日

邪悪なるものよ 残酷なるものよ 獰猛なるものよ 人を喰らう[年] 言挙げを開示し 門を全て密閉し 餃子の夕餉終え 夜もすがら爆竹 悪鬼妖魔は撃退 女ども家内安全 男達は年始挨拶 万事如意の賛辞

鄙風

寒の明けをまえに 隠れ鬼や通り魔を 追い払おうという 豆撒き行事習俗は 極東の歌舞音曲に 四季の魁を告ぐ風 重く湿った雪降る 東嬴の蓬莱の島に 海幸山幸を予祝し 衣食を整え住居し 労働と冨の分配を 予測し祈念する日 影鬼の跳梁跋扈を 稲妻は雷電で砕き …

月雪花-つきゆきはな

月の歌人がいて 雪国の人はいる 桜の詩人もいる 名月を夜もすがら観て めぐる池の果ての無さ 豪雪の圧に日々耐えて めぐらせる智恵と斥力 山桜は異の端の言の葉 神の鼻息荒い吹雪の花 大和しうるわしとしか 吹き溜まりの賛辞なし 文はあやに和らげられ 物は…

帳尻

でんと構える でんつくでん 長広舌と露地 巻き込む力と 抜ける脱力が ふつふつ滾り ゆるゆる冷め けつに火が あっちっち 鎬と鉋とが 細身を削り 火花が散る やる気充分 みる事半分 しりまくって どっこいしょ 矢でも鉄砲でも 持って来やがれ おや種子島かい …