果実 1

冬曇天の路上に
硬い皮に包まれ
剛質無患子降る
陶磁器に盛れば
微動だにしない
わずかに扁平で
褐色の柔らかい
髪の毛のように
胚芽を囲み覆う
艶消し漆黒の球


夏曇天の黒土に
軟らかく乳滴る
葉陰の無花果
硝子器に盛れば
尻から裂けつつ
果肉を仄見せて
甘く渦巻く芳香
鬱屈を砂糖煮に
些事一つずつを
徹底して保存す