2008-01-14 果実 1 冬曇天の路上に 硬い皮に包まれ 剛質無患子降る 陶磁器に盛れば 微動だにしない わずかに扁平で 褐色の柔らかい 髪の毛のように 胚芽を囲み覆う 艶消し漆黒の球 夏曇天の黒土に 軟らかく乳滴る 葉陰の無花果だ 硝子器に盛れば 尻から裂けつつ 果肉を仄見せて 甘く渦巻く芳香 鬱屈を砂糖煮に 些事一つずつを 徹底して保存す