廃屋

sokuze2007-03-23

家屋の内外から人の気配が去ると
土中の植生は俄かに活気づく
空中を浮遊する種子も着床し
光の矢は酷烈に扉や窓を刻む

環八から中央高速の下を西へ向かうと
玉川上水沿いの遊歩道があり
K駅に近づくと緋鯉真鯉の姿が見える
承応3(1654)年に完成し
明治31(1898)年淀橋浄水場が水道通水を始めるまで
江戸100万人の飢渇を癒し続けてきた上水だ
水路を覆う様々な樹木の下には諸葛菜が咲く

駅の脇の焼鳥屋や花屋を背に
南へ坂を上ると分かれ道があり
去りがてのこの追分に建つ屋内からは
去り行く人の背を四弦琴が見送るだけ