落首   001

剥落したこれらが
記念する為の鍵だ
文明の遺跡からは
生活の切れ切れが
将来に生かせるか
不明のまま伝わる
現在の湧水地にも
縄文人の衣食住が
痕跡の形で残存し
聞こえる気がする


凋落した何かが今
記帳するべく脳の
中枢神経へ信号を
必死になって送る
高楼での栄華夢酔
指弾される桃源郷
醒めて末端神経が
無事である間だけ
四肢の指先感覚が
触れる真偽のほど


欠落してゆく花弁
記録された来歴に
薄紅の花影が射す
辛夷の映発する
春日の面ざしから
猛々しい葉の茂り
苛烈な言葉の論は
響くはずもないが
たゆたいを刻んで
無意識裏の寝返り