sokuze2007-01-16

一陽来復
 冬至から25日が過ぎ、陽の射入る刻限が明らかに延びた。
同時刻の角度も上がってきており、日脚は伸びている。
 光と影、陰陽の逆転は畳の目ほどしか進まないが、
気付くと路地の縁石に落ちる陰影は明度と強度を増している。
 
 冬の日が落ち、灯ともし頃、燗とものの煮える匂いに引かれつつ、
逢魔ケ刻を無事やり過ごした一国一城の主(あるじ)どもが家路につく。
 金目鯛煮付け、地元野菜の小松菜とスクランブルエッグの炒め煮は、
すっきりとした辛口の日本酒「菊勇」に絶妙の合い口だ。

 寒中の卵は、滋養のかたまりであると同時に、中に含まれる期待が満々と殻一杯に膨らみ、
光の純度を極大まで上げようと身を持して待ち構えている気配がある。

   物の見えたる光、いまだ心に消えざる中(ウチ)にいひとむべし  【芭蕉
俳諧に表現しようとする素材の本質が、一瞬の光のように感じられたら、その印象が消えないうちにすばやくとらえて表現しなければならない)〈 山下一海『芭蕉百名言』富士見書房 〉